• 3月4日(木) 会員卓話「学生期の山と私、そして・・・」

    健康委員会委員長 長澤 邦雄

    私は今年古希(人生七十古来稀)を迎えました。古代インドでは、人生を25年毎の四つの期(四住期)、すなわち、①学生期(心身を鍛え、学習し、体験を積む)。②家住期(社会人の時期、就職し、家庭を持ち、子供を育てる)。③林住期(社会人としての務めを終えたあと、すべての人が迎える、もっとも輝かしい第3の人生)。④遊行期(死をみつめて生きる)に分けて考えたという。(五木寛之)。私はこの四住期に自分史の一端を当てはめ、卓話をいたします。

    ①学生期:先祖は会津藩出の屯田兵、昭和16年旭川で出生、その後札幌の円山で高卒までカントリーボーイ(半農半事業家の六男)として天真爛漫に過ごしました。

    挫折と再起を繰り返しながら、その後の6年間は市川~東京で相変らずの田舎大学生(日本医大)として清貧な生活を謳歌しました。この間、多くの良き師の教え(医は仁術、惻隠之心仁之端也、羞悪之心義之端也、等など)を受けるも馬耳東風。春夏秋冬よき仲間と山行し、運のみで回避できた生死の境を数々経験(谷川岳墜落、剣岳滑落、五竜岳~鹿島槍縦走撤退、厳冬の富士滑落の危機、アフガニスタンヒンズークシュ山群での氷河転落など、ヨットでの外洋漂流)をしました。

    自然の偉大さに比べ、己の小ささや無力さを痛感し。この頃より己の頭上や背後に自分を超えた何かの存在を感じはじめ、まさに心身鍛錬の時期でした。

    ②家住期:インターン後に医者になり、食べていけない無給医局員として、診療、研究、雑用、出張の日々に追われ(無用の用の時期)。結婚や子育て、そして予期せぬ開業と、唯ただ超多忙の日々を送る(まさに光陰矢の如し時期)。

    ③林住期:還暦で脳梗塞に倒れ、後遺症やうつとの葛藤の中、家族や多くの人との繋がりの中で「まだ必要とされている存在」や「生かされていることの幸せ」などを実感し、「失ったものを嘆くよりも、のこされたものを大事にせよ」(H・Aラスク)の名言を大切に今日を迎えています。

    まさに「人生万事塞翁が馬」の如き人生でした。これからは「自勝者強、知足者富」(老子)の知足(身の程をわきまえ、むやみに不満をもたず程ほどに)を忘れずに、無縁社会(無縁死や自殺者の多い)叫ばれるなか、人との繋がりを大切に、「自利と利他」「自立と依存」の良いバランスの中で、残された自分の人生を正面にみながら、輝かしい「第三の人生」になるよう歩みたく思っています。

    最後に、私はロータリーの第一標語「超我の奉仕」や「綱領」(個人的には大連宣言が性に合っています)は素晴らしい行動理念と思っています。しかし、私はロータリー歴27年になりますが、頭で分ってまだまだ行動が伴っていない感じでいます。

    多くのクラブが会員増強(数や質)で悩んでいると思います。現在の日本の精神的、社会的、経済的状況を考えれば、増強は一朝一夕にいかないと思っています。目先の事象に一喜一憂せず、クラブが会員一人一人で構成されている以上、人と人とのつながりを第一に、相手を思いやる心(恕)や信頼を構築し、心のこもった身の丈にあったロータリー奉仕活動が出来るように、少しケェセラセラ(なるようになるさ)的な気持も持ちながら、建前よりも本音でクラブ運営することも大切かと思っています。

    「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」(方丈記)

    これからも好意と友情の繋がりをお願いし、卓話といたしました。