5月30日(木) 会員卓話
「電気料金値上げ申請について」
このたび、弊社は、経済産業大臣に対して電気料金の値上げを申請いたしました。お客さまに多大なご負担をお願いすることとなり、お詫び申し上げます。最大限の経営効率化の実施を前提に、規制部門のお客さまについては、本年9月1日から平均10.20%の電気料金の値上げを申請いたしました。また、自由化部門のお客さまについても同日から、平均13.46%の値上げをお願いすることといたしました。
今回の電気料金の値上げ申請に至った背景を説明いたします。一昨年3月に発生した福島第一原子力発電所の事故を契機に、原子力発電所の新規制基準に対する見直しが進められ、当社の泊発電所は長期停止した状況が続いております。このため、火力燃料費が大幅に増加しており、原子力が正常に動いていた平成22年度では、1,200億円程度だった燃料費・購入電力料が、24年度には2.6倍の3,100億円まで増加し、徹底した費用削減に取り組みましたが、平成24年度の収支につきましては、経常損失1,186億円と過去最大の損失となりました。
このため、平成21年度末には、純資産は3,700億円程度でしたが、原子力停止による収支悪化により純資産を取り崩してきた結果、平成24年度末では1,552億円まで減少しました。現行の電気料金を維持したままでは、今後、自己資本の毀損がさらに拡大し、燃料調達や設備の保守・保全などに必要な資金の調達も困難となり、電力の安定供給にも支障をきたすおそれがあることから、値上げ申請をいたしました。
電気料金のしくみと総括原価の概要について説明いたします。公共料金にかかる規制は、国民生活上の必要財について、①その財の安定的な供給の維持・確保を図るために、その供給に要する費用の回収を確実にする一方で、②当該供給事業者が過度の利益を得ることを防止することにより使用者の利益を保護する、という両面の観点から行われています。
供給義務と料金規制を課しており、「料金が能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたもの」であることを電気事業法では求めています。
そして、電気料金は、「原価主義の原則」「公正報酬の原則」「公平の原則」に基づき決定されています。
総括原価方式では、「原価主義の原則」に基づき,能率的な経営のもとで,電気事業に必要な費用に事業報酬を加え、控除収益を差し引いた額(原価)と、電気料金の収入が等しくなるように、電気料金を算定することとなっており、①安定的に費用回収ができるため、長期的・計画的な設備投資インセンティブが図られる、②料金を過剰に低く設定することでサービスが継続困難となる事態や、お客さまに不当に高い料金負担を課すような事態が生じない(収入と原価の一致)というのが特徴です。
電気料金の算定に当たっては、①総原価をもとに、固定費・可変費などに配分、②供給電圧により低圧・高圧・特別高圧の需要種別に配分、そして③契約種別ごとに電気料金を算定します。
また、規制部門の電気料金は、値上げの場合は「認可」、値下げの場合は「届出」制度となっています。
燃料費調整制度は、本格的な料金改定とは別に、事業者の経営努力の及ばない為替レートや原油価格などの影響を外部化することにより、経済情勢の変化を出来る限り迅速に料金に反映させる制度であり、平成8年1月に導入され、現在は過去3ヶ月分の平均燃料価格と基準燃料価格の差に基づき、2ヵ月後の料金に自動的に毎月反映させる仕組みとなっています。
この制度では、燃料価格の上昇による火力燃料費の増加は電気料金に反映しますが、現在のように、電源構成の変化により燃料消費量そのものが増え、火力燃料費が増加した場合は反映しないため、今回の値上げ申請により、実態に即した電源構成に基づき燃料費を含む原価全体を見直しております。
規制部門のお客さまに適用される電気料金の値上げ申請を行った場合、経済産業大臣による審査、広くお客さまから意見をお伺いする公聴会等、一連の手続きを行った上で経済産業大臣が認可を行うこととなっています。
当社は、昭和61年以降、これまでに14度にわたる電気料金の引下げを実施し、この結果、平成8年度まで全国一の水準であったが、平成23年度では他の地域と遜色のないレベルにまでなりました。
それでは、このたび申請した電気料金値上げの概要について説明いたします。
今回原価については、最大限の経営効率化を356億円織り込むものの、原子力発電所の発電停止に伴う燃料費・購入電力料などの大幅な増加は避けられず6,164億円となる見込みです。一方で、当該期間において現行の電気料金を継続した場合の収入は5,520億円となる見込みで、この結果、収入不足額は644億円となり、規制部門では、10.20%の値上げを申請し、自由化部門では同日から13.46%の値上げをお願いすることといたしました。
平成21年12月に泊発電所3号機が運転を開始し、当社の原価の構成が大きく変わりました。
今回の原価算定期間においては、泊発電所3号機の導入により設備関連費用などが増加することに加え、火力発電所や流通設備などの設備経年化による修繕工事の増加もあり650億円程度の費用増が見込まれますが、泊発電所3号機が計画どおり稼働していれば火力燃料費の低減効果で吸収し、現行料金を維持できる見通しでした。
しかしながら、泊発電所の停止による火力燃料費の増加(600億円)を含む追加コストが840億円程度発生し、最大限の効率化350億円程度を織り込んでも吸収できず、前回原価と比較して503億円増加する見通しです。
平成20年の前回原価は、泊発電所3号機の運転開始前の原価であり、今回の原価と比較した場合、燃料費や減価償却費などをはじめ、原価の構造が大きく変わっております。
今回の原価算定における主な前提諸元についてご説明します。
まず、販売電力量につきましては、昨年節電にご協力いただいた実績等を踏まえ、前回原価の前提と比較して10億kWh減少の317億kWhと想定しております。
泊発電所の発電再開には、不明な部分がございますが、当社は福島第一発電所の事故を踏まえた安全対策を迅速かつ的確に進めており、需給状況の厳しくなる次の冬前には発電再開させていただきたいと考えており、泊発電所1号機の発電再開時期を平成25年12月、泊発電所2号機は平成26年1月、3号機は夏前の平成26年6月と順次発電再開する前提で料金原価を算定しております。
今回の申請に際しましては、最大限の効率化を織り込みました。具体的には、設備投資・修繕費などについては、電力の安定供給や安全の確保を前提に、これまで取り組んできた経営効率化をさらに推し進めるとともに、役員報酬や従業員の給料手当、厚生費といった人件費の削減や、普及開発関係費・諸費の削減など、最大限の効率化に取り組むことといたします。
人件費につきましては、前回原価においては、退職給与金が年金資産の運用が極めて好調であり、マイナス計上となりましたが、今回の原価は、前回からの反動により72億円の増加となりました。しかしながら、役員報酬の削減や社員年収水準の引下げ、厚生費の削減などを織り込み、人件費全体では前回原価と比較して10億円の増加にとどまりました。
では、値上げ後の電気料金につきましてご説明させていただきます。
今回の値上げでは、基本料金は据え置き、電力量料金のみの値上げといたしました。従量電灯の3段階料金では、暮らしへの影響に配慮し、毎日の生活に必要不可欠な、照明や冷蔵庫などのご使用量に相当する第1段階料金の値上げ幅を小さくし、他のご契約メニューの値上げ率より低く抑えております。
一般的なご家庭のご契約メニューである従量電灯Bにつきましては、契約電流30A、月間のご使用量が260kWhの場合のモデル料金は、ひと月あたりの値上げ額が451円、値上げ率が6.81%となっております。
オール電化のお客さまに多くご契約いただいている時間帯別電灯、ドリーム8についてご説明いたします。蓄熱暖房器ご使用で契約容量8kVA、1年間のご使用量が23,001kWhの場合のモデル料金は、値上げ額は年間で59,215円、値上げ率が22.06%となっております。オール電化などにお住まいのお客さまには、大きなご負担をおかけすることになり、お詫び申し上げますが、夜間単価は、昼間に比べて全体の使用量が少ないことを前提に割安となっておりますが、弊社の昼間と夜間の電気の使われ方は、冬の1日の全体使用量を例に上げますと、ほとんど差がない状態になってきておりますので、今回の値上げにおいて、昼間と夜間で同水準の値上げをお願いすることとなったものです。
夜間の料金は現在、昼間の料金よりも割安であることから、値上げ率では大きくなっておりますが、値上げ後におきましても、依然として割安な料金設定となっておりますので、ご理解をお願いいたします。
高圧や特別高圧で受電している自由化部門のお客さまについてご説明いたします。
自由化部門のお客さまにつきましては、現在の電力量料金単価に、特別高圧で電気の供給を受けている場合は2.02円/kWh、高圧の場合は2.07円/kWhを一律に上乗せさせていただきます。
値上げ時期につきましては、規制部門と同日の、平成25年9月1日からの値上げをお願いすることといたしました。規制部門の料金が認可時に変更となった場合には、認可された原価にもとづいて、自由化部門の料金についても見直しをさせていただきます。
電気料金の値上げに関する内容について、当社ホームページのトップページに「電気料金の値上げに関するお願い」コーナーを設定し、タイムリーな情報提供に努めてまいりますので、ご参照下さい。
最後に、今夏の電力需給について説明いたします。
国からは、今夏の需給見通しはお客さまによる定着した節電を前提としていることから、定着分について確実な節電が行われるよう、当社管内を含む全国において「数値目標を伴わない節電」が要請されました。お客さまにおかれましては、7月1日(月)から9月30日(月)までの平日9時から20時において、引き続き無理のない範囲での節電にご協力いただきますようお願い申し上げます。
当社は、今後も発電設備の日常的な保守・点検体制の強化、可能な限りの設備保全に努めるとともに、大規模な電源脱落等に備えた需給調整契約等の対策を進めることで、電力の安定供給に万全を期してまいります。
今冬は、発電設備や北本連系設備の計画外停止が重複しなかったことから、需給がひっ迫する事態には至りませんでしたが、30年以上を経過した火力発電設備が7割程度となっており、経年化対応が必要になってきています。新規電源として石狩湾新港発電所の建設を計画していますが、運用開始は平成31年2月を予定しており、電力の安定供給のためにも、需給状況の厳しくなる次の冬前には泊発電所を発電再開させていただきたいと考えておりますので、ご理解いただきますようお願い申し上げます。