2月2日(木) 会員卓話
クラブ会報・広報・雑誌・IC委員会 加藤 正浩 会員
〇東日本大震災以降の北海道電力の取り組みについて
1. 泊発電所の安全対策について
泊発電所では、福島第一原子力発電所における事故を踏まえ、地震・津波に対する安全対策に万全を期してまいります。
泊発電所には、外部からの電力供給が途絶え、非常用発電機や海水ポンプが機能を失った場合でも炉心を冷却することができる「タービン動補助給水ポンプ」を備えています。さらに、安全対策として、①津波が到着したり交流電源が喪失した場合でも、炉心や使用済み燃料の損傷を防止する目的とした緊急安全対策を実施しました。②さらなる安全性・信頼性の向上のため、防潮堤の設置や中長期的な安全対策を講じていきます。③ストレステスト1次評価、地震・津波に対する安全性評価にも取り組んでいます。
泊発電所は、福島第一原子力発電所と炉のタイプが異なります。泊のタイプである加圧水型(PWR)では、放射線物質を含まない別の水(2次冷却水)に熱を伝え蒸気を発生させる点が大きく異なります。
泊発電所は、当初より、津波により非常用発電機や海水ポンプが機能喪失した場合でも、加圧水型軽水炉(PWR)の特徴である、蒸気で駆動する「タービン動補助給水ポンプ」により2次系からの炉心冷却が可能です。使用済燃料ピットについても、山側にある海抜31mの道路から消火用水や水槽付消防車で直接冷却水を補給することにより、冷却が可能です。
当社は、津波が到達したり交流電源を喪失した場合でも、炉心や使用済燃料の損傷を防止することを目的とした次のような緊急安全対策を実施しました。
① 電源確保 :非常用発電機が起動できず全交流電源喪失した場合に備え、移動発電機車を設置しました。
② 浸水対策 :重要な機器が設置されている部屋の水密性を向上させました。
③ 蒸気発生器水源確保 :タービン動補助給水ポンプを介した原子炉の冷却における代替給水方法を確立しました。
④ 使用済燃料ピット水源確保 :使用済燃料ピットへの代替給水方法を確立しました。
中長期的対策として、防潮堤の設置などのさらなる信頼性向上対策を実施し、津波対策に万全を期してまいります。浸水高さ海抜15mの津波が襲来しても敷地への浸水を防止するため、高さ海抜15m以上の防潮堤を敷地海岸部の全長約1.7kmにわたり設置します。(平成26年度完成目途)防潮堤の設置により、発電設備全体を津波から防護することができ、発電所への津波の影響を最小限に抑えることができます。
ストレステストとは、原子力発電所に設計時の想定を超える地震や津波などが起きた場合、どのような影響があるかを評価するものです。地震や津波など想定を超える災害に対し、原子力発電所がどこまで耐えられるか、弱点はどこかを個々の機器ごとに判断するものです。ストレステストの流れは、原子力安全・保安院の確認後、原子力安全委員会の妥当性確認、それらにパスした後、4大臣による発電再開可否の判断となりますが、発電再開にあたっては地元をはじめ道民の皆さまのご理解が必要とされています。
原子力安全・保安院に報告した泊発電所1・2号機のストレステスト1次評価結果の概要は次のとおりです。①福島で観測された揺れ(550ガル)よりも大きい揺れ(1,023ガル相当)に耐えられることを確認しました。②福島と同程度の高さの津波(津波遡上高さ14~15m)が襲来しても耐えられることを確認しました。③福島と同じ事象が発生したとしても、最低でも20日間に渡り、外部からの支援無しに原子炉等の損傷を防止できることを確認しました。
当社は、泊発電所敷地前面にある長さ10~40kmの断層について、これらの連動を想定した地震動・津波評価の実施計画を策定し、検討を行い、評価結果に基づき、地震動および津波が泊発電所に与える影響を評価していきます。一方で、泊発電所がある日本海側には沈み込みに伴う海溝型プレート境界はないことから、東北地方太平洋沖地震のような海溝型地震による津波は発生しないと考えられます。
2. 北海道における電力需給状況について
今冬の供給予備力については、発電設備の定期検査・補修時期の見直しや、自家発からの電力購入、需給調整契約の拡大を進めた結果、想定される最大電力に対して70万kW程度以上の供給予備力を確保できる見通しとなり、電力需給に大きな支障が生じる状況にはない見込みです。
しかし、稼働中の発電設備の計画外停止が発生した場合には、厳しい需給状況となることも想定され、必ずしも万全の状態ではありません。
泊1・2号機が今後も再稼働されないと仮定した場合、来春から予定されている泊発電所3号機の定期検査以降、非常に厳しい需給状況となり、来夏には最大需要電力に対して供給力が不足する深刻な事態が想定されています。当社は需給対策の検討を進めていますが、さらなる供給力の確保策には限界もあり、安全の確保を大前提とした泊1・2号機の早期発電再開が重要と考えています。
原子力発電は、2010年度の日本の電源構成の約29%を占めています。これを火力発電により代替する場合、年間約3兆円超の燃料コストの増嵩を招き、国富が流出してしまいます。仮にこの燃料コストをそのまま電気料金に転嫁した場合、約2割の電力コスト上昇を招く可能性があります。電力の安定供給の確保に加え、燃料費の増加などの影響も甚大であることから、安全の確保を大前提に、泊発電所1・2号機の早期発電再開が極めて重要と考えています。
3. 北海道における最適なエネルギー供給に向けた取り組みについて
当社は、段階的に風力発電の導入を拡大しており、現時点で系統規模に対する割合は全国で最大となっています。また、導入量の拡大に向け、北本連系設備を活用した東北・東京電力との共同実証試験を進め、さらに20万kWの追加連系の募集を行っています。
太陽光発電からの電力購入は、2011年3月末で約4.3万kWに達しており、メガソーラーのさらなる導入拡大に向けた検討も進めています。
風力発電の年間設備利用率26.3%(H21全道平均)で、季節によって風況が異なり、夏季は発電量が尐なく、冬季は多い傾向にあります。太陽光発電(H21稚内メガソーラー実績)の年間設備利用率10.7%で、日照時間が短く、積雪などの影響もあり、冬季は発電量が尐なくなる傾向にあります。
風力発電と太陽光発電の出力は、気象条件によって大きく変動するため、電力品質(周波数、電圧)への影響が懸念されます。風力発電や太陽光発電の系統連系に際しては、送電線や変電所の変圧器を流れる電力潮流が設備容量を超えないようにすることが必要です。風力発電は、需要規模が小さな地域での立地が多く、送電線や変圧器の容量も小さいため、潮流面や電圧変動面での課題が地域により顕在化しています。
風力・太陽光発電の導入が拡大すると、その出力変動にも対応して火力発電所などの調整を行うことが必要になります。出力調整が追いつかなくなるほど風力・太陽光発電の導入が拡大すると、周波数の維持が困難となり、お客さまへ悪影響が生じるおそれがあります。
現在、風力発電の多くが西名寄系統に連系しています。西名寄系統は電力需要が小さく設備も小規模なため、大規模連系にあたっては送電・変電容量や電圧変動面の制約が生じます。風力・太陽光発電の導入構想は、北海道の系統規模に対して極めて大きなものですが、電力の安定供給に支障を来さないために、十分な影響評価を行うことが必要です。大量の風力・太陽光発電の導入にあたっては、大規模かつ長期間の工事が必要となるとともに、設備対策費用の問題が生じると考えられます。したがって、費用負担については、現状の原因者(電源設置者)負担のほか、補助金による公的支援や電気料金による回収なども考えられますが、実際にご負担いただく方々の十分なご理解をいただくことが重要と考えています。
当社のその他の取り組みを説明します。①省エネルギーに向けた取り組み方法(ご家庭向け・事業者さま向け)を当社ホームページや広報紙で紹介しています。従来のヒーター系電化に比べ、省エネルギー、CO2排出量の低減に大きく貢献するヒートポンプ機器を推進しています。②当社初のLNG火力発電所となる石狩湾新港発電所の建設計画を進め、燃料種の多様化を図ります。また、当社初の純揚水発電所となる京極発電所の建設も進めています。③北海道と本州の電力系統を連系する北本連系設備の増強(60万kW→90万kW)の早期実現に向けた検討を進めているところで、道内の電源脱落リスクへのより確実な対応や、再生可能エネルギーの導入拡大に寄与できるものと考えています。
電力の安定供給の確保や地球温暖化防止のためには、これらの取り組みをバランス良く組み合わせていくことが重要と考えています。
本日の説明のまとめをしますと、震災から得られた最新の知見を踏まえ、ストレステスト・耐震安全性評価への対応や、防潮堤設置などのさらなる安全性向上対策を進めてまいります。
その上で、北海道における電力の安定供給においては、安全確保を大前提とした泊発電所1・2号機の再稼働が大きな役割を果たすものと考えています。
再生可能エネルギーの導入拡大については、お客さまのお使いになる電気の品質や料金への影響も考慮しながら適切に対処してまいります。
北海道における最適なエネルギー供給に向け、省エネルギーの推進、石狩湾新港発電所や京極発電所の建設、北本連系設備の増強などに取り組んでまいります。
以上で説明を終わりますが、ご質問やご意見がありましたら、私までよろしくお願いいたします。本日はどうもありがとうございました。