• 2月9日(木) 卓話

    ◇講師紹介:青少年奉仕・ローターアクト委員会 前田 浩志 委員長

     

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    皆さん、こんにちは。本日は当委員会の担当例会に多くのご参加をいただき、ありがとうございます。

     

    本日の青少年奉仕・ローターアクト委員会の担当例会では数多くの担いを歴任され、道内外を問わずにご活躍中の当委員会の荒 洋一 会員より「貧困な子供たちに対する支援」というテーマで卓話をしていただきます。

     

    ここで簡単に荒会員の略歴をご紹介させていただきます。社会福祉法人 千歳いずみ学園の総合施設長、千歳市社会福祉協議会の副会長を務められている事は皆さんよくご存知かと思いますが、その他にも、北海道知的障がい福祉協会の副会長、北海道社会就労センター協議会 幹事、千歳市地域公共交通活性化協議会 委員、旭ヶ丘町内会の会長等々、グーグルの検索ワードにひとたび荒会員の名前を入れると、顔写真と共に、山の様に沢山の記事が出てきて、その役割の多さがどれほどのものなのかよく分ります。

     

    そんな荒会員のお話を聞かせていただく貴重な機会となります。私たちが所属するロータリークラブの活動にもきっと繋がるような内容となると思います。最後までお付き合いの程よろしくお願いします。本日の卓話が皆さんにとって有意義なものとなる事を願い、私からの紹介とさせていただきます。それでは、荒会員よろしくお願いします。

     

     

    ◇講師:青少年奉仕・ローターアクト委員会 荒 洋一 委員

     

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    テーマ「貧困な子供たちに対する支援」

     

    皆さんこんにちは。前田委員長より過分なるご紹介をいただきありがとうございました。様々な役職については26ほどやっております。頼まれたら断れない性格のため、役職がどんどん増えてしまいました。

     

    今、日本の世の中を考えた時に「貧困問題」というのは一つの大きな社会問題になっています。350万円以上の収入を得ている家庭が非常に少なくなってきています。それとともに子供たちも非常に貧困な状況に陥っているというのが、大きな社会的現象であります。

     

    今日は子供に特化した中で、私たち日本の国民にとって、子供たちは日本の宝であり財産であり、この子たちが今後どのように大人になって、日本を支えていただけるか、という話をさせていただきます。

     

    配布資料は厚生労働省(以下、厚労省と略)からいただいたものです。厚労省は今、「ひとり親対策」を中心とした支援を行っています。「ひとり親」とは母子家庭と父子家庭のことをいいます。母子家庭の場合は特に経済的困窮が多く、正職率が37%位であり、後はパートとか非常勤等の不安定な生活を送っています。本当に困窮した場合には、母子生活支援施設に入り、資格を取得し、自立して親子で施設を出ることになります。自立後は350万円ほどの収入を得ることを目標としています。そのような活動をしているのが厚労省の仕事です。

     

    子供たちへの教育支援や、貧困のために生活も看てあげなければならない。ところが、それは文科省、厚労省で全てをやりきることはできない。よって、それを取りまとめているのが内閣府です。内閣府が取りまとめたペーパーを厚労省がHPに使用しています。

     

    ◇「子どもの貧困対策の推進に関する法律(概要)」

    「子どもの貧困対策の推進に関する法律」は平成25年に制定されました。この法律を作るに当たっては、各省庁が検討し、法律化までには2年位の時間を要しております。この法律は、「子どもの将来が生まれ育った環境で左右されないよう、貧困の状況にある子どもが健やかに育成される環境を整備するとともに、教育の機会均等を図るため、子どもの貧困対策を総合的に推進すること」を目的としています。

    これは子供たちが「きちんと学習する」ということと、「きちんとした生活を送る」ということを、総合的に推進していくための法律です。

     

    大綱の内容は資料に記載されている通りであり、法律は出来上がったが、都道府県は努力目標であり、市町村も努力目標となっていす。

     

    ◇「子どもの貧困対策の推進に関する法律について」

    法律の背景ですが、「子どもの貧困率」は16.3%(2012年)。OECD加盟34カ国中25位。2009年には15.7%でしたが貧困率は増えてきています。子供がいる現役世帯のうち、「大人が一人の貧困率」は54.6%(2012年)。OECD加盟34カ国中33位。2009年には50.8%でした。

     

    日本全体での高校進学率は98.6%ですが、生活保護世帯では90.8%しかありません。8ポイントもの差がついています。

     

    大人が生活困窮していて、子供たちの教育機会がなかなかありません。エンゼルプランでは子どもたちは平等です。親たちが貧困であっても、その子供たちが大人になった時はそうであってはならない。というのがこの法律の目的であります。ですから、貧困の連鎖はさせない。というのが国の大きな考え方です。国が一番目指しているのは「貧困の状況にある子どもが健やかに育成される環境を整備」、「教育の機会均等」、「子供の貧困対策を総合的に推進」、「子供の将来がその生まれ育った環境によって左右されることのない社会を実現」であります。国がこの法律を作ることによって、都道府県、市町村は国と連携して、努力して地方から子供たちを救っていくというのが一つの考え方です。

     

    ◇「相対的貧困率の推移について」

    貧困率の推移ですが、現在は「相対的貧困率(2013年調査:16.1%)」よりも「子どもの貧困率(2013年調査:16.3%)」が上回っています。「大人一人」が貧困をしている世帯が54.6%。「子どもがいる現役世帯」の貧困率は15.1%。「大人二人以上」が貧困に陥っているのが12.4%。これが何を意味するかですが、失業した人たちがこれだけいて、そして今まで働いていた所得より、少ない所得での生活を余儀なくされている。ということがグラフで表されています。

     

    ◇「子供の貧困対策に関する大綱について」

    日本の国が「子供の貧困」に対し、具体的に何をしたいかを描いたのが大綱です。「基本的な方針」では、現状を見つめ、何処に重きを置くかを表しています。

     

    「子供の貧困に関する指標」にはスクールソーシャルワーカーの配置人数1,008人(平成25年度)とありますが、これは全国の総人数です。千歳には1人しかいません。子供たちの貧困を救ってあげることのできるスクールソーシャルワーカーが非常に少ないのです。学校で子供の状況を先生が把握して、先生がスクールソーシャルワーカーに連絡し、スクールソーシャルワーカーが子供と面談を行い、様々な支援策を親御さんに教えてあげています。様々な支援を受けるにも、日本は申請社会であるため、申請を知らずに、支援を受けることのできない方々がたくさんおります。そういった意味でもアドバイス役のスクールソーシャルワーカーの数は少ないと思っています。

     

    母子家庭の就業率は80.6%ですが、正規は39.4%です。この方々の年間所得は350万円位であろうと言われています。非正規47.4%の方は年間所得が250万円に満たないのが実態です。

     

    父子家庭は経済的には母子に比べ恵まれていますが、父親の仕事上、親が不在になりがちなため、子供は常に家に独りでいる時間が多いことから「心の貧困」が問題になっています。これを地域でどう支えて行くかが非常に重要です。

    「経済的な貧困」と「心の貧困」。大綱では総合的に支援をするという考え方です。

     

    「教育の支援」は学校をプラットホームにし、きめ細やかな学力指導により学力を保障するという考え方です。今、千歳市では経済的に恵まれない中学校の生徒のために塾を開いています。また、ご飯を食べられない子供にも支援をしようという動きも出ています。

     

    現在、大学・短大・専門学校を卒業した子供たちの借金は平均で270~280万円です。大学4年生だと370~380万円の借金です。それだけ育英資金を借りているということです。育英資金は返さなければなりません。日本の育英資金は41歳までに全額返済しなさいという仕組みです。私のところの法人は、若い従業員には手当を付けて、育英資金返済の負担軽減化を行っています。そうしなければ若い従業員が定着し、なかなか結婚もできないということになります。少子化でありながら、更に子供が少なくなっていく、ことになってしまします。そういう状況から子供たちを救ってあげる。というのが、これからの社会の大きな役割であると思っています。

     

    ◇「大綱のポイント」

    どうしても家庭で育てきれない子供たちは児童養護施設に行きます。その子供たちは、親元にお金が無いからなかなか進学ができません。育英資金を借りての進学を勧めても「働きたい」という子供たちがいます。大学に行く場合は18歳で児童養護施設を出て、資金を借りて自分で生活を始めなければなりません。本当に大変なことなのです。

     

    ひとり親家庭の子供の就園率は72.3%であり、100%ではありません。今、保育は100%にしなければならない、と叫んでいますが、なかなかそうはなっていません。親は働いているので地域に保育所がなければ大変なことになります。その地域の保育所が満杯であれば、その隣の町の遠い保育所に預けなければなりません。そうなれば仕事ができないことになってしまいます。そういう実態がこの数字に表れています。

     

    ◇「大綱のポイント②」

    就学資金として年間48万円を無償にする制度を創設することが閣議決定されました。この資金を活用するためには、おそらく選抜試験があり、優秀な子どものみがその資金を活用できることになるかもしれません。子供たちにとって平等に活用ができれば有難いと思っております。

     

    現在、大学に行っている子供たちの親の平均年齢は42~45歳であり、年収は600万円未満で、家などの様々なローンを抱えているのが実情です。したがって、教育資金が無いから育英資金を借りざるを得ない状況となっています。

     

    最後になりますが、千歳市も母子家庭の自立に向けた様々な支援をしているのは事実であります。未来のある子供たちが平等に育っていくために、そういう子どもたちに対し、我々も地域の人間として、支援をしていかなければならない、ということを本日お話しさせていただきました。ご清聴ありがとうございました。