2月25日(木) 国際奉仕委員会卓話
◇ゲスト卓話講師紹介:国際奉仕委員会 牟田 裕一 副委員長
本日の講師は航空自衛隊第2航空団司令兼千歳基地司令 空将補 安藤 忠司 様です。
※牟田副委員長よりご紹介された安藤空将補の主な経歴です。
・階級:空将補
・平成元年3月 防衛大学校卒業
・平成10年3月 防衛大学校
・平成11年3月 幹部学校付(米空軍大学指揮幕僚課程)
・平成14年8月 航空幕僚監部人事教育部人事計画課兼ねて陸上自衛隊東部方面総監部防衛課
・平成17年4月 第3航空団第8飛行隊長
・平成21年9月 航空幕僚監部人事教育部補任課人事第1班長
・平成22年8月 幹部学校付(スタンフォード大フーバー研究所)
・平成23年8月 航空幕僚監部総務部庶務室長
・平成24年4月 北部航空方面隊司令部防衛部長
・平成25年3月 統合幕僚監部運用部運用第1課長
・平成27年3月 現職
◇ゲスト講師:航空自衛隊第2航空団司令兼千歳基地司令 空将補 安藤 忠司 様
◇テーマ:「航空自衛隊及び千歳基地の概要」
皆さんこんにちは。千歳RCの例会にお招きいただきありがとうございます。本日は「航空自衛隊及び千歳基地の概要」につきまして分かりやすくまとめて参りました。どうぞよろしくお願いいたします。
平成元年に防衛大学を卒業して27年になりますが、その間、25ポスト、転居24回で引っ越しばかりでした。学生パイロットの時はF15に乗りたかったので、「初任地は千歳」と言っておりましたが、小松基地でF4ファントムに乗せられまして、その後25年以上、希望が叶わなかったのですが、昨年3月、やっと千歳基地司令として着任することができました。パイロットとして各地を転々としておりましたが、スライドの青色で記載しているところは航空自衛隊ではない勤務先です。陸上自衛隊の朝霞での勤務をはじめ、色々と経験をさせていただきました。
※自己紹介の後、たくさんのスライドを交え、内容の濃い卓話となりましたが、非常に分かりやすいご説明をいただきました。以下、ご説明いただきましたポイントを記載します。
1.航空防衛力の意義
・空には警察機関がない。したがって、航空自衛隊が平時から有事まで対応している。
・領空の主権を守ることができる唯一の防衛力であり、非常に意義がある。
2.航空自衛隊の任務
・「自衛隊の任務」は自衛隊法第3条で定められている。
・自衛隊が実施可能な「行動」は自衛隊法第6章に定められている。自衛隊は自衛隊法に記載してある「行動」しか遂行できない。
・本来任務ではないが遂行している業務がある。それは自衛隊法第8章「雑則」に定められている。例えば国賓等の輸送は、国の機関からの依頼により特輸隊が行っている。オリンピックに対する支援も行っている。ブルーインパルスが空に五輪を描いた例がある。
3.航空自衛隊の編成・組織
・航空幕僚監部の下に5つの機能別組織(メジャーコマンド)がある。
・「航空総隊」は作戦をする部隊。「航空支援集団」は作戦を直接支援する部隊。「航空教育集団」は教育をする部隊。「航空開発実験集団」は試験や開発をする部隊。「補給本部」は物を買ったり配ったりのロジスティックを行っている部隊。
4.航空総隊
・「航空総隊司令官」、「航空総隊司令部」は横田基地にある。
・航空総隊司令官の下は4つの航空方面隊等から成っている。それぞれの方面隊は「戦闘機部隊(航空団)」、空を監視する「航空警戒管制部隊」、「地対空誘導弾部隊(高射群)」から成っている。
・「戦闘機部隊」は北部、中部、西部、南西の4つの区域に分かれており、それぞれの区域には原則として2つの航空基地がある。最近は沖縄に第9航空団ができた。
・「航空救難部隊」の本来の目的は、自衛隊のパイロットが戦闘や訓練時に緊急脱出をした場合に助けに行く部隊である。災害派遣や遭難者救出にも出動している。全国10ヶ所に基地がある。
5.航空支援集団
・作戦を支援する「航空支援集団」は「輸送航空隊」、「航空保安管制群」、「航空気象群」、「飛行点検隊」、「特別航空輸送隊」
・「輸送部隊」のC-1輸送機は古くなってしまったので、間もなくC-2という新しい輸送機に更新する。C-1の部隊は入間と美保の2ヶ所。C-130Hはプロペラ機で世界中で使われているベストセラーの輸送機であり小牧の部隊。同じく小牧のKC-767は、輸送機としてもつかえる空中給油機で、戦闘機に給油することができる。政府専用機は千歳にある。
6.千歳基地の概要
・北海道の航空自衛官は約4千人。
・新千歳空港は昭和63年に運用が開始され、原則官民分離となったが航空交通管制業務は航空自衛隊が担当。
・滑走路は相互使用協定を締結しており滑走路に不具合が発生した場合には、調整により相互利用が可能となっている。昨年3月、新千歳空港の滑走路に鹿が紛れ込んだ時は、民間機が千歳基地の滑走路を使用した。
・千歳基地は東側滑走路と西側滑走路の2本。千歳基地の敷地面積は東京ディズニーランドの20.7倍もの広大な敷地。航空自衛隊の基地では最大の広さである。
・大正15年に北海道新聞の前身である小樽新聞社が飛行機を飛ばすこととなり、その飛行機が千歳に降りてもらうべく村民が何もない野原を2日間で開墾し滑走路を造った。「北海第1号」は大正15年10月22日に着陸した。
・昭和14年に海軍航空隊が千歳に開設され、昭和15年に完成した千歳海軍航空隊司令部庁舎は今でも残っており、第2航空団司令部がこの建物を使っている。非常に伝統のある建物。
・昭和29年に航空自衛隊が発足し、昭和31年に戦闘機で最初の航空団となる第2航空団が浜松で生まれた。そして、昭和32年に浜松から第2航空団が千歳に移設され、航空自衛隊千歳基地が開設された。来年で60周年を迎える。
・F-15を使用している航空団としては千歳基地が一番古い。
・平成5年に政府専用機の部隊が千歳にできた。使用航空機B-747の整備基盤が日本になくなったことから、平成31年には機体がB-777に切り替わる。後2~3年後には新しい機体と古い機体の計4機が並ぶことになる。
・千歳基地には「第2航空団(約1,500名)」、「第3高射群(約550名)」、「千歳救難隊(約90名)」、「特別航空輸送隊(約150名)」、「千歳管制隊」等で約2,500名の隊員がいる。
・スクランブルの回数は近年増加傾向にあり、平成26年度の航空自衛隊全体でのスクランブル回数は、冷戦時代ピーク時とほぼ同じ回数となった。北部航空方面隊の回数も近年増加しているが、南西航空混成団が近年著しく増加している。
・政府専用機2機を有する「特別航空輸送隊」は22年間で、運行回数約300回、訪問国約90ケ国、寄港空港は約250空港にも上る。
・千歳基地では、過去10年間で60件の災害派遣を行った。救急患者の搬送は、天候が一番厳しい条件下で威力を発揮するのが航空自衛隊の救難隊である。北海道で対応できない重症患者の場合は、まず千歳基地まで搬送。小牧基地からC-130輸送機が機動衛生ユニット(空飛ぶICU)を積載し千歳基地までやって来るので、C-130輸送機に患者を移動し、特定医療が可能な病院のある本州へ搬送する。
※安藤様のご説明の後、質疑が行われ、航空自衛隊への一層の理解を深めることができました。
※最後に沼田会長より本日の卓話に対する謝辞をいただきました。安藤様、ご多忙の中、とても分かりやすいスライドと丁寧なご説明をいただき誠にありがとうございました。この講話によって、千歳RC会員一同、航空自衛隊千歳基地が更に身近に感じることができました。